（7）８月３０日（土）　……　クチャ

10:50……塩水溝（渓谷）

クチャの町を出るとじきに塩水溝（渓谷）に入る。褶曲(しゅうきょく)した地層が地表に露出しており、異様な雰囲気がある。太古に海底から盛り上がってきたときのすさまじい力を想像することができた。道路は徐々に高度を上げていく。やがて高台から振り返ると、草木１本もない茶褐色の荒涼とした景色を見渡せた。

12:10〜17:20……キジル（克孜爾）千仏洞

クチャから72km、車で約１時間半。拝城県キジル郷の少し手前で道路をはずれ、さらに荒れ地を激しく揺られながら行くと、眼下にムザト河（ダリア）（渭干河）の谷間が開け、左岸に林が広がっている。急な坂を谷底に降ると断崖にうがたれた石窟群が見えてきた。断崖の下には紅柳（タマリスク。ウイグル語でユルグン）の茂みがあり、荒涼とした景色を見てきた目には濃い緑の上に乗っているピンク色の花が印象的であった。
　千仏洞を管理している新疆ウイグル自治区文物研究所の宮照英さん（まだ18歳の少女であった）の案内で見学する。昼食（亀茲可楽（キジコーラ）だって！）をはさんで、８、９、10、27、32、34、38、76、77、80の合計10窟を見せてもらった。壁画などがほとんど残っていないのは、19世紀末から20世紀初頭の探検ブームで、ドイツのル・コックやグリュンヴェーデル、一部は日本の大谷探検隊らによって剥ぎ取られてしまったためである。
　一帯は緑が豊富で、夏は格好の日陰を提供してくれる。せせらぎを遡って行くと、絶壁の中ほどから幾筋もの水が静かに流れ落ちていた。天山の雪融け水が地下水となってここに出てくるのだという。 「なみだの泉」と呼ばれるこの湧水には哀しい伝説がある。
キジル千仏洞

19:05……クチャ故城

クチャは歴史の長い町だが、しばしば川の氾濫で苦しめられていた。1957年に発生した大洪水で町は大半が破壊されたため、中心地は現在の新城に移された。

22:00……クチャ人民劇場

クチャ文藝工作団による歌舞を楽しむ。（スピーカーから出てくる音が大きすぎた）
　演奏曲目(1)「アンズ園の喜び」　(2)「にぎやかな仲間たち」女声独唱　(3)「私は恋人の一輪の花」女声独唱　(4)「愛情の象徴」　(5)「花を摘む娘」手鼓の踊り　(6)「エゼズ」（意味不詳）　(7)「キジの仙女」（キジル千仏洞の壁画より）　(8)「幸福の歌」　(9)「古いミン」（？）　(10)「天山の雪」　(11)「アタックNo.1」（8〜11は少女が歌った）　(12)「あの人はどんな人」ウイグル歌舞　(13)「娘の春」ウズベク歌舞　(14)「渭干河のほとり」　(15)「春の歓び」ウイグル歌舞　(16)ウイグル歌舞