クチャの伝説

●なみだの泉の伝説●
　昔むかし、キジ国の王様にたいそう美しい娘がおりました。あるとき1人の若者が薪拾いに来て王女と出会い、２人はたちまち恋に落ちてしまいした。
　若者が王様に王女との結婚を申し込むと、王様は石窟を1000掘ることができたら結婚を許そうと言いました。
　若者は何年も休みなく洞窟を掘り続け、999窟を掘り終えましたが、とうとう疲れきって死んでしまいました。それを知った王女は、悲しみのあまり毎日毎日泣き続けました。
　その王女の涙がこの泉になったのです。
〈新疆ウイグル自治区文物研究所・宮照英さんによる〉

●クズルガハの伝説・その１●
　むかしキジ国王に美しい娘がいました。あるとき娘は1人の商人と出会い、愛し合うようになりました。２人は国王に結婚の許しを願い出ましたが、王はキジルからホータンまでの間に2000基の烽火台を建てたら許そうといました。
　商人は言われたとおり一生懸命に烽火台を建て、何年もかかってようくホータンの近くまでたどり着きましたが、あと少しのところで力尽き死んでしまいました。
　それを知った娘は、商人の建てた烽火台に登り、ホータンのほうを見がらいつまでも悲しみ続けました。だから、ここを「クズルガハ」（娘そこにとどまる）と呼ぶのです。
〈クチャの日本語ガイド、アハマッティさんによる〉

(上の話は「なみだの泉の伝説」にそっくりで、事実上同じ物語の別バージョンと言えるだろう。ところが、クズルガハ烽火台には次のような別の物語もあるらしい。)

●クズルガハの伝説・その２●
　国王に娘が生まれたが、その子はサソリに刺されて死ぬと予言される。国王は高い土の塔を築き、その上に娘を住まわせた。しかし、国王が届けたリンゴの中にサソリが潜んでいて、娘は刺されて死んでしまった。人はそこを「クズルガハ」と呼ぶようになった。
〈出典調査中〉

(ペローの「眠り姫」（眠りの森の美女）で姫が予言どおり針に刺されて100年の眠りにつくのと、なんとなく似ている感じがする。ペローが下敷きにした物語のさらに元をたどるとオリエントの民話だそうである。ということは、中近東あたりからこっちのイスラム圏には、ほかにも似た物語があるのかもしれない。機会があれば調べてみよう。)

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更新： 2002/5/6