（3）８月２６日（火）　……　ウルムチ〜ホータン

09:35……ウルムチ空港離陸

08:30に日の出。滑走路の向こうにボゴダ峰（5445m）が見える。
　CA2241（アクスでの給油を含めてホータンまで２時間半）。アントノフというプロペラ機。窓際に座ると、どこか継ぎ目あたりからすきま風が吹き込んでくるので、心身ともにひんやりさせられた。ジェット機に比べ高度が低く速度も遅いので、万年雪に被われた天山の美しい姿がはっきりと見える。ウルムチから南下していくとやがてボストン湖が見え、コルラ（庫爾勒）上空にさしかかると西に進路を変える。そこからは右に天山、左にタクラマカン砂漠を眺めながらの飛行となった。眼下の砂漠には天山南路の道が一直線に延びていた。数日後、この道を逆に帰ってくる。
天山

11:45〜12:05……アクス（阿克蘇）空港

給油で20分。雨がわずかにぱらつく。
　ここからはホータン河に沿って、「入ったら出られない」（タクラマカン）と言われる砂の海を越えてホータンまで南下。

13:30……ホータン空港着

ウルムチからアクスでの休憩を含めて２時間半でホータン（和田）に到着。待っているはずの出迎えの姿がなかった。ウルムチから同行している新疆登山協会の日本語通訳王海函さんが連絡をとるが、どうも様子がおかしい。たまたま王さんの知人でホータン外事処の人と出会ったので、宿まで車で２回に分けて運んでもらった。
ホータン

14:40……ホータン第一招待所

空港から車で約10分。塀に囲まれた広い敷地の中に、1985年11月にオープンしたばかりの宿舎の建物があった。女性スタッフたちが慌てて部屋の支度を始めた。どういうわけかウルムチの登山協会から連絡がなかったので、招待所は私たちがこの日行くことを知らなかったらしいのだ。（※このときは、なんていい加減なんだと思ったが、その後の旅行で中国のそういうアバウトさにすっかり馴れてしまい、いまではその程度のことでは驚かなくなってしまった）
　昼間の気温は日なた28.6℃、室内25.2℃で、乾燥しているため直射日光が当らなければ案外涼しく感じる。
　季節も関係するのだろうが、ふだんは砂漠に吹く風で細かいパウダー状の砂が空に舞い上がっているため、雲一つなく晴れているはずなのに抜けるような青空にはなかなかならない（しかし、陽射しは強烈だから日焼けするので注意が必要）。持ち物はすぐに白い粉（砂）におおわれてしまう。カメラなどの精密機器は要注意。メガネもかすんでくるが、うっかりこすったらレンズに傷がついてしまう。

15:15……招待所食堂

昼食。新疆ビール。室温のビールも馴れてしまえば、うまいと感じるようになるものだ。（ホータンにビール工場はない。ここで飲んでいるのは、なんとウルムチからトラックで５日もかけて運んだものだそうである。ちなみに、ホータン〜カシュガル〜ウルムチの長途汽車（バス）は４泊５日、食事宿泊代込みで110元と聞いた）

16:35……新疆和田玉石収購站

ホータン玉石買取センター。ホータン近辺で採れた玉（ぎょく）はすべてここで取り引きされている。ホータンの玉はつとに有名だが、採掘だけで加工はほとんど行われていないそうだ。原石がごろごろ転がっていた。よそのまちに運ばれて、あの美しい玉杯に生まれ変わるのだろう。

18:30……和田地緞廠（じゅうたん工場）

ホータンはじゅうたんでも有名。ただし、ガイド君が言うには、ウルムチやカシュガルほどよいものはできないとか。大きな織機の前に女性たちが一列に並んで座り、毛糸を一本ずつ結び付けていく。その手さばきはじつに鮮やかである。工場直売品は大きなものでも1400元ほどだった。

19:30……白玉河

実際には玉は崑崙山脈の奥から採ってくるそうだが、万が一に賭けて河原で玉拾いに挑戦。きれいな石はたくさんあるが、ホンモノはそう簡単に見つかるものではない。ただ、素人目にはなかなか区別がつかないので、ついつい期待がふくらむ。
　いつのまにかウイグルの少年が現れて、自分の拾った玉を買わないかと言っていた。ホンモノではないかもしれないが、誰かが買い取った。買えばつきまとうのをやめるだろうと考えたのかもしれない。少年はカネをポケットに突っ込むと、おもむろに反対のポケットから別の石を取り出した。「こっちのも安くしとくよ」とニヤリ。なるほど、商売がうまいと感心してしまった。

21:50……市場

そろそろ夕暮れも迫る頃、市場を歩いているとたちまち子どもたちに取り囲まれた。カメラが珍しいのだろう。我も我もとカメラの前に立つ。今度はファインダーを覗かせろとせがんでくる。かわるがわる覗いては、たぶん「オイお前が見えたぞ」とかなんとか言いながら、はしゃいでいた。